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『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』のイメージイラスト(実際の表紙ではありません)

雑談は前置きじゃない。会う前の5分の仕込みで、信頼をつくる道具だ。

イラストはイメージです(実際の表紙とは異なります)

ビジネス・仕事術

世界の一流は「雑談」で何を話しているのか

ピョートル・フェリクス・グジバチ ・ Kindle版

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ひとことで言うとグーグルで人材育成を統括した著者が、雑談を本題の前置きではなく、信頼(ラポール)をつくって成果につなげる戦略的な対話として説く本です。話題選びより目的・準備・質問の設計が大事だとし、社内の1on1から商談、避けたい話題まで扱います。

INTROどんな本か

そもそも、雑談って何のためにするんでしょう。

先に白状しておくと、俺は人が多く集まる場所が苦手で、異業種交流会の類にはまず行かない。基本引きこもり、と自分で書いている人間です。笑 そんな人間が雑談の本を推すんかい、という話ですが、この本はまさにそういう人のための本です。

「暑いですね」「そうですね」。このやり取りから、本音は何も見えてこない。日本の会話の3分の1ほどは決まり文句と相槌だ、と著者は言います。

著者はポーランド生まれのピョートル・フェリクス・グジバチさん。モルガン・スタンレー、グーグルの人材育成統括部長を経て、起業家・コンサルタントとして活動しています。本書はクロスメディア・パブリッシングから、2023年3月に出ました。

立場ははっきりしています。日本人は雑談を、世間話や無駄話、本題前の前置きだと考えがち。しかし一流は、雑談を明確な意図を持った戦略的な対話として使う。目標は「ラポール」、心が通じ合って、安心して話を受け止め合う関係です。

雑談が苦手なのは、性格の問題じゃない。前置きだと思っているから、無難な話題を手探りして不安になる。順番の問題です。

俺は2026年に「なぜ沈黙は、人を語らせるのか」で、人は聞かれることで構えてしまう、と書いた。普段は私語のない上司が、1on1で急に私生活を聞くと、部下は評価を恐れて黙る。本書が挙げるこの例は、まさにその構造です。違うのは、著者の処方が、日常の短い雑談を先に積んでおけ、という実務寄りのところ。

目的のない会話が嫌いな人ほど、目的を定めれば強みに変えられる、という整理もありがたい。なんでもはっきりさせたい性格の人間には、これは刺さる。

効くのは、雑談が苦手で「何を話せばいいか分からない」人。1on1や商談で、距離の詰め方に迷っている管理職や営業職。それから、出社とリモートが混ざる職場で、チームの信頼づくりに悩んでいる人です。

話し上手になる本じゃない。会う前の5分の使い方を変える本です。センスは要りません。

CHAPTERS章ごとの中身

はじめに雑談は前置きでなく、五つの意図を持つ対話

「雑談は前置きでなく、五つの意図を持つ対話」のイメージイラスト

著者はポーランド生まれで、ドイツ、オランダ、米国を経て、2000年に千葉大の研究員として来日。ベルリッツで異文化コミュニケーション系のコンサル部門を立ち上げ、モルガン・スタンレーで組織開発と人材育成を担い、グーグルでは人材育成統括部長を務めた人です。

その目から見ると、日本人は天気の話から入り、雑談を本題前の前置き、場を和らげる潤滑油と考えている。商談の場でそれだけでは惜しい、というのが出発点です。グーグルでは「Let's chat!」が日常語で、議題が固まる前に、計画や課題、目指す成果、問題点を率直に出し合う場だそうです。

一流の雑談は「対話(dialogue)」に近く、五つの意図を持つとされます。状況確認、情報を渡す、情報を得る、信用をつくる、決める。

1on1の話も、導入で出てきます。外資やIT企業で約10年前から導入され、コロナ禍の在宅勤務で孤立が問題になって広がったが、多くは進み具合を確かめる「面談」止まり。普段私語のない上司が急に私生活を聞くと、部下は評価を恐れて黙る。原因は、日常の雑談不足だ、と。

雑談上手とは、話が面白い人ではなく、明確な意図を持って深い会話ができる人。ここで、読む前の印象がひっくり返ります。

第1章決まり文句をやめ、自己認識から自己開示へ

「決まり文句をやめ、自己認識から自己開示へ」のイメージイラスト

第1章の入口は、日本の会話の3分の1ほどは決まり文句と相槌だ、という著者の実感です。「暑いですね」「お世話になっております」のやりとりは、情報量が「暑い」「元気」程度。外国人には本音が見えない、と。

ポーランドでは、「How are you?」に近況や上司への不満まで返ってくる、という例が出ます。自己開示で警戒が解け、心理的距離が縮む。暑さの話も、「週末は何を?」と広げれば趣味の話になる。開示しやすい質問を投げるのも技術だ、とあります。

日本人が自己開示に不慣れな理由として、著者は教育と雇用の仕組みを挙げます。欧米では社会・政治・歴史に自分の意見を持つのが大人のたしなみだが、日本は暗記中心の教育と、新卒一括採用、会社主導の配属で、自分で考えて表明する訓練が少ない、と。

ここで思い出すのが、2021年に書いたハイウェイの話です。アメリカで働く尊敬する日本人の先輩に、照れ隠しで「熱く語ってすいません」と言ったら、出口を8個くらい乗り過ごしながら怒られた。笑 やりたいことをやるヤツが熱く語るのは普通だ、と。自己開示を恥ずかしがるのは、たぶん日本の側のクセなんですよね。

先にやるべきは自己認識で、価値観・信念・望みの3点を自問しておく。順序は、自己認識、自己開示、自己表現、自己実現。会社名や大学名だけの自己紹介では、人柄が伝わらない。酒が苦手なのに飲み会に誘われるのは、自分が伝えていないせいだ、という例が地味に効きます。

第1章ラポールをつくる、会う前の準備

「ラポールをつくる、会う前の準備」のイメージイラスト

一流が狙うのは、信頼・信用・尊敬の関係。目標は、心が通じ合い、安心して話を受け止め合う関係、つまり「ラポール」です。天気の話では作れない。

家族を尋ねるだけで多くがわかる、という例が具体的です。幼い子がいて早く帰りたい人なら、飲みに誘わず面談を短く切り上げる、会食は昼にする、夜は連絡しない。そういう配慮が信頼につながる。

土台に置かれるのは、ロジャーズの「無条件の肯定的関心」。良し悪しで裁かず、「なぜそう考えるか」を知ろうとする。英米は取引成立後に打ち上げとして飲む「トランザクション文化」、日本は先に飲んで関係をつくる「リレーション文化」、という対比も分かりやすい。

準備の差も指摘されます。欧米の一流は、IR資料、SNS、知人経由で相手を調べ、担当者の関心や懸念、決裁者、判断の時期まで想定して話題を用意する。著者の印象では、日本人の約半数は無準備。逆に、著書を読んで異論をぶつけてくる人、前日に確認の連絡をくれる人は、例外なく仕事ができたそうです。

意味のない雑談で失うものは三つ。時間、ビジネスの可能性、評判。雑談は当日のアドリブじゃなく、前日までの仕込みで決まる。ここが本書の背骨です。

第2章グーグルの社内雑談、TGIFと長テーブル

「グーグルの社内雑談、TGIFと長テーブル」のイメージイラスト

第2章は社内の雑談です。海外では社内雑談を、親睦ではなく成果を上げる戦略的な道具として使う。その例がグーグル。

社内コミュニケーションが転換期にある理由は三つ。ダイバーシティ&インクルージョン、働き方改革の行き詰まり、ハラスメント意識の高まり。著者のフェイスブック調査(250人)では、4人に1人が上司に本音を言うべきでないとし、3人に1人が実際に言っていない、とあります。

グーグルの社員の最大の不満は「上司の考えが見えない」ことだった。そこで毎週金曜午後に、全社集会TGIFを開く。経営陣が方針を説明し、酒と軽食つきで、誰でも幹部に直接質問や反論ができる。幹部は感情的にならず、丁寧に応じる。

オフィスは「create collisions」、偶然の出会いを作る発想です。広い空間を細い通路でつなぎ、社食には一人席を置かず長テーブルにする。人事トップのラズロ・ボックは、2000人超の部下の名前と顔を覚え、新人にも名前で声をかけたそうです。上司と部下はコーチと選手の関係で、社内調査には「上司は私を人として扱う」という項目まであります。

第2章雑談の7つの効果と、1on1を堅くしない方法

「雑談の7つの効果と、1on1を堅くしない方法」のイメージイラスト

大手広告代理店の比較実験では、雑談の多いチームが、雑談ゼロのチームを成果で大きく上回った。上司には後者のほうが真面目に見える、という印象と結果のずれも指摘されます。

7つの効果は、つながり、信頼、心理的安全性、働きやすさ、意欲、会議での発言、結論への納得。顧客企業のオフィスの笑い声や挨拶を、診断の材料にするという話も面白い。静まり返った職場は危険信号だそうです。無意識の偏見や、「子育て中の女性に重い仕事は気の毒」のような一見親切な扱いが、挑戦の機会を奪う、という指摘もあります。

上司には、進捗確認だけでなく部下の「思い」を聞け、と言います。形式ばった1on1は模範解答を招くので、著者の会社は正式な1on1を設けず、ランチや移動中に「どうなりたい?」を聞く。一度で済ませず、場面を変えて繰り返す。会議室の正式な聞き取りでは無難な答えしか出ないが、居酒屋では180度変わる、とも。

俺が2026年に「正解が早すぎる社会構造」で書いたのも、同じ現象です。整理がつく前に正しさが届くと、人は守りに入って黙る。場所を変え、時間を置いて同じ問いを繰り返す著者のやり方は、その順番を守る実務になっていると思う。

部下の側には「Manage your manager!」の発想が出てきます。上司の立ち位置、評価基準、リスク認識を、移動中などに少しずつ聞き出す。目的はごますりではなく相互利益で、報連相は多めの「オーバーコミュニケーション」でちょうどいい、と。

第3章商談は確認から、決裁者と予算を雑談で聞く

「商談は確認から、決裁者と予算を雑談で聞く」のイメージイラスト

第3章の最初のミッションは「確認作業」です。雑談は前座ではなく、本題の下準備。日本人は挨拶のあとすぐ説明に入って、空気の変化を見落とす。違和感があれば、説明の前に方針変更の有無を尋ねる。予算が消えているような事態でも、無駄なプレゼンを避けられます。

次は意思決定の流れ。決裁者、予算の持ち主、決定手順を知らずに窓口へ売り込んでも無駄で、少なくとも決め手と障害は雑談で聞け、と。LTV(取引全期間で顧客がもたらす利益)を高めるのも雑談で、長期の関係は商品力より担当者の力量で決まる。一流は個人間の信頼を、企業間の取引に広げていく。

発注側が威張り、受注側が私生活まで犠牲にする光景は海外ではありえない、と著者。対等な関係の3手は、共通の趣味、体験と考え方の共有、相手に不可欠な存在になること。

質問の技術も具体的です。著者はワークショップの「7つの質問」(仕事で得たいもの、その理由、良い仕事の基準、今の仕事を選んだ理由、昨年と今年のつながり、最大の強み、必要な支援)を、言い回しを変えて自然に聞く。聞きにくいことは「素朴な疑問なんですけど」と前置きして、直球で聞く。

複数人の商談では役割分担。著者は金銭の話をせず、「外国人カード」で日本人なら聞かない質問を担当する。心構えは、1回で全部取ろうとしない、得た情報の使い道を考える、前回の内容を覚えておく。同じ質問の繰り返しは最悪で、質問と回答を対でスマホに書き留めよ、と。

第4章避けたい6つの話題と、雑談しない選択

「避けたい6つの話題と、雑談しない選択」のイメージイラスト

第4章の前提は、共通のタブーはなく関係性次第、という点。性の話題は恋人同士なら大切でも、職場の飲み会で上司が部下に振れば、悪気がなくても後にハラスメントとして蒸し返されうる。

6つのNGは、いきなり私生活に踏み込まない(「休日は何を?」から入り、「誰と飲んだ?」より「何を飲んだ?」)、出身大学や前職などのファクト質問、収入、場面違い、宗教(無理に避けなくていいが、祈りの時間や食の制約は把握する)、下ネタ。

最後の「あえて雑談しない」という選択肢が、俺は好きです。目的は心理的安全性とラポールによる生産性の向上だから、それができているなら、惰性の定例雑談は要らない。雑談を礼賛しきらない、バランスの取れた結び方です。

おわりにでは、コロナ禍のリモート化で、挨拶だけで本題に入る会議が増え、つながりが薄れたことが振り返られます。雑談不要を歓迎した人も、本音や目的意識が共有できない不安を経験し、雑談の意義が再認識された。心がけは4点で、驚かせない程度の自己開示、相手の人柄を知ろうとすること、信頼構築という目的を忘れないこと、ラポールの状態を客観的に観察することです。

LESSONS明日から使える教訓

  1. 会う前の5分で、目的と相手を整理しろ目的・知りたいこと・関係の期間・相手の納得条件を書き出す。最低5分は相手と会社を検索して、具体的な問いを用意する。ものづくり的にいうと、雑談も仕込みで決まるってことです。
  2. 上の立場から先に、弱みを見せろ私生活の質問は唐突にせず、「休日は何を?」から入って、出たキーワードで質問を重ねる。先に自分の弱みを見せると、相手の警戒が解ける。聞く前に、まず話す側に回る。これが一番の近道だと思う。
  3. 相手ごとの質問と答えを、記録しろCRMでもスマホでもいいので、質問と回答を対で残して、会う前に見返す。同じ質問の繰り返しは最悪、と本書は言います。俺的には、これが地味にいちばん効くと思う。

CONCLUSION俺の結論

結論。次に誰かと会う前に、5分だけ相手を調べて、問いを一つ用意しろ。話題探しは、そのあとでいい。

天気の話で終わらせず、「週末は何を?」と一歩だけ広げる。聞く前に、自分の小さな弱みを一つ出す。聞いた答えは、次に会う前に見返せる場所に残す。一回で全部取ろうとしない。

雑談は、才能じゃなく仕込みです。人が多い場所が苦手な人間でも、目的さえ決めれば、短くて深い雑談はできる。この本は、そういう人の味方です。センスより、5分の準備。

NEWS関連ニュース

この本のテーマについて、最近話題になったニュースです。

パーソル総合研究所 ・

「テレワークに関する調査(2026)」を発表 テレワーク実施率は21.4%に微減、2022年以降は緩やかな減少傾向

全国の就業者3万614人を対象に、2026年7月に行った調査の発表です。テレワーク実施率は21.4%で、前年同期比1.1ポイント減でした。「原則出社」の指示がある割合は24.6%で、すべての企業規模で増えています。一方、テレワークを続けたい人は81.6%でした。専門家の提言では、管理職のマネジメント負荷やコミュニケーションの課題が変わっていないことが、出社が選ばれる背景として挙げられています。

この本とのつながり:本書は、リモート化で雑談の場が失われる点を課題にしています。出社とテレワークが混ざる職場では、雑談を意図的に設ける設計が引き続き問われます。この調査は雑談そのものを測ったものではありません。

FOR YOUこんな人におすすめ

合わないかもしれない人:すぐ使える話題のネタ集を探している人。中身は話題より、目的と準備と質問の設計です。

FAQよくある質問

『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』はどんな本ですか?

グーグルで人材育成を統括した著者が、雑談を本題の前置きではなく、信頼(ラポール)をつくって成果につなげる戦略的な対話として説く本です。話題より、目的・準備・質問の設計を重視しています。

ラポールとは何ですか?

心が通じ合い、安心して話を受け止め合う関係のことで、本書では信頼・信用・尊敬の関係とも説明されています。雑談は、このラポールをつくるために使います。

雑談が苦手な原因は何ですか?

雑談を本題の前置きと捉えて、無難な話題を手探りしてしまうことだと本書は見ています。目的を決め、相手を調べて準備することで、苦手意識を減らせるとされています。

雑談の前に何を準備すればいいですか?

目的、知りたいこと、関係の期間、相手の納得条件を書き出し、最低5分は相手と会社を検索して、具体的な問いを用意します。

グーグルでは雑談をどう活用していますか?

毎週金曜のTGIFで誰でも経営陣に直接質問でき、社食は長テーブルで偶然の会話を生みます。雑談の多いチームは成果が高いとされています。

1on1を堅苦しくしないコツは?

形式ばった1on1より、日常の短い雑談を積み重ねることです。上司から先に弱みを開示し、方向を示して任せるマクロマネジメントを意識します。

商談の雑談では何を聞けばいいですか?

冒頭で状況の変化を確認し、決裁者、予算、決め手と障害を、雑談の中で早めに聞きます。個人対個人の信頼が、長期の取引につながるとされています。

雑談で避けたほうがいい話題は?

いきなり私生活、ファクト質問(出身大学や前職)、収入、場面違い、宗教、下ネタの6つです。ただし共通のタブーはなく、関係性次第だとされています。

この本の批判や注意点は?

著者の経験と見方にもとづく内容で、グーグルの事例や調査の数字は本書の記述の紹介です。話題のネタ集を期待すると、肩透かしになります。

リモートワークでも雑談は必要ですか?

本書は、リモート化で挨拶だけで本題に入る会議が増え、雑談の意義が見直されたと述べています。リモートでは、雑談の場を意図的に設けることを勧めています。

MONOGENIC伊丹谷のブログから

ご注意:著者の経験と見方にもとづく内容で、グーグルなどの事例や調査の数字は、本書の記述の紹介です。2023年3月の本で、コロナ禍後の職場を前提にしています。

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