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『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』のイメージイラスト(実際の表紙ではありません)

「働かない」んじゃない。「働けない」のが、見えていないだけだ。

イラストはイメージです(実際の表紙とは異なります)

社会・経済・科学

貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」

鈴木大介 ・ Kindle版

高次脳機能障害仕事術貧困福祉
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ひとことで言うと遅刻、先送り、督促状の放置。ルポライターの鈴木大介さんが、脳梗塞後の高次脳機能障害の当事者として、取材で出会った人たちの行動を脳の情報処理の不調から読み直す本(幻冬舎新書)。貧困は脳の不自由から生じる「二次症状」だ、と言い切ります。

INTROどんな本か

「だらしない」は、だいたい説明を省いた言葉だ。

遅刻する。約束をすっぽかす。督促状を開けない。ふつうは性格や努力の問題として片づけられる。この本は、そこで止まらずに「なぜ」を掘っていきます。外から見れば信じがたい行動が、脳の側から見ると、ちゃんと筋が通っている。

著者はルポライターの鈴木大介さん。『最貧困女子』などで貧困の現場を取材してきた人が、2015年に脳梗塞で高次脳機能障害になった。そして、かつての取材相手の訴えが、自分の症状と一致していることに気づく。幻冬舎新書です。取材する側から、取材される側の体感へ。立ち位置が変わったことで、見えるものが変わった。

芯はシンプルです。貧困の最大の要因は、働けなくなり、戻れないこと。その原因は目に見えない脳の不自由で、見えないから「働かない」と見なされる。診断名は問わない。貧困は、脳の不自由から生じる「二次症状」だ、と。

俺は2026年に「人間消耗の三重構造フレームワーク」という記事で、社会は「人はある程度成熟している」前提で設計されている、と書いた。現実の人は、未熟で揺れ続けるのに。この本は、その前提のズレがいちばん残酷な形で出る場所を、当事者の体感で書いています。

これは性格の問題じゃない。構造の問題だ。著者自身、制度を使えないのは、半分以上は書類を「作る側」の問題だと言い切っている。

もう一つ、この本の言葉で残るのが「適度な依存」。2021年の連載で、俺は自立とは人を正しく頼れることだと書いた。この本は、それを脳の仕組みの側から裏づけてくる。

効くのは、部下や同僚の不調に戸惑っている人。福祉や制度設計、窓口の書類やフォームづくりに関わる人。そして、自分の不調を努力不足だと責めてしまっている人です。

診断名を当てはめる本でも、治療法を示す本でもない。目の前の人の行動を、叱る前にもう一度見直すための見取り図として読むのが、ちょうどいいと思う。

怠けに見えていたものの多くは、見えていなかった努力だった。この本は、その見え方を静かに変えてきます。

CHAPTERS章ごとの中身

まえがき・第1章小銭が数えられず、泣き崩れた理由

まえがきで、著者は自分の過去の仕事を振り返ります。『最貧困女子』は2002〜13年の取材をもとに、売春などの「不適切な自助努力」で生き延びる女性や少女を描いた本でした。取材中、遅刻、約束の不履行、期限切れ、封筒を開けない、支援者に噛みつく、という場面が何度もあった。けれど、その「なぜ」を書けば自己責任論の燃料になると考え、意図的に書かなかった。当時の説明の枠組みは、家族・地域・制度の「三つの無縁」と、精神・発達・知的の「三つの障害」。その解像度を落としたことを、今は後悔している、と。

第1章の入口は、北関東の25歳、太田杏里さん。施設を円満に退所して自立し、Excel検定を取って派遣先で重用された元事務職の女性です。元夫の長期にわたるDVで心身を壊し、抗不安薬に頼りながらキャバクラで働くシングルマザーになった。深夜のドラッグストアで小銭を数えられず、泣き崩れて店を飛び出す。夜職から戻れない理由の一つが、会計の困難だった。

著者は当時、うつ、PTSD、薬の影響と片づけていた。けれど後に、自分自身が病院の売店で788円を払えなくなる。数えている間に数字が消え、周囲の音で頭が白紙になる。作業記憶と注意機能の低下だと理解はしても、体感は「圧倒的な不可能感」だった、と書いています。

回復期に支える人・物・金があったから助かったが、なければ確実に貧困に落ちた。著者はそう断言します。自分の取材の解像度が低かったと、10年後に自分で書く。この誠実さが、この本の信用の土台になっていると思う。

第2章年収500万円の人が、働けなくなるまで

第2章は前提を置きます。貧困の要因はいろいろある。賃金と物価、家族の資源、教育、奨学金、福祉の未熟。でもそれは副次的で、最大の要因は、働けなくなり、戻れないこと。

中心になるのが、32歳の師岡瑞葉さんです。26歳で頭金ゼロ、2,400万円のマンションを購入し、退職後に滞納。期限の利益を失い(最速4カ月)、一括請求、競売寸前。重要書類を開封せず、傷病手当も失業給付も受けず、離職票は2度紛失している。取材はリーマン後のローン破綻を扱う週刊誌記事のためで、フラット35でも100人に3人が不履行、という数字(2021年・住宅金融支援機構)も出てきます。

経歴は、むしろ堅実です。親はおらず、親戚の援助と奨学金で建築系の専門学校へ。工務店で3D CADと顧客対応を身につけ、独立したデザイン事務所のチーフになる。年収は500万円超、2級建築士も取得していた。

崩れ方は具体的です。起きているのに遅刻する。仕事中に突然頭が回らなくなる。提案中の追加要望で固まる。自分で書いた予定を思い出せない。人を介した指示を理解できない。決定打は新規案件の担当決めの会議で、手持ちの案件と負荷が見通せず、断る理由も言えずに引き受けてしまった。納期遅れと泊まり込みの悪循環に入り、通知を見るだけで動悸がする。社長に異動を頼んでも拒まれ、医師の休職指示も言えないまま、退職した。

任意売却業者が挙げた破綻者の共通点は、精神科通院、生活費の借入、状況把握と優先順位の喪失、ペットの多頭飼い、ゴミ屋敷化。著者は当時これを「取れ高の少ない取材」と感じて記事にしなかった。今は、資源も才能もある人が働けなくなる過程を、自覚的に言語化した最も濃い証言だったと悔い、当事者として翻訳し直すと宣言しています。

才能も資格も収入もある人が、数年で崩れる。俺は、この章を他人事として読める人はほとんどいないと思う。

第3章頭が白くなる「脳性疲労」の正体

第3章は、「頭が白くなる」の正体を脳性疲労と呼びます。医学用語ではないと断りつつ、発達障害の疲れやすさや、うつの易疲労性に相当するもの。就労継続を妨げる主因で、発症9年の著者にとっても最大の支障だと言う。

症状は、頭の重さと霧、読んでいる行やセルに視点を合わせられない、文の意味が入らない、会話についていけない、言葉が組み立てられない、震え、過換気。取材で見た「頭が回らない」「本が読めない」は、すべてこれだった、という読み直しです。

分かりにくさの説明が具体的です。普通の疲れとの差は、「歩けば済む」と「足がつって倒れる」ほど。予測できず、変動も大きい。著者の場合、苦手な相手へのメールに30分〜1時間、3人以上の会議が1時間弱、資料の統合が2時間で、半日使えなくなる。一方で、動画編集は10時間続く(坂道ダッシュと平地の散歩のたとえ)。日内変動も日差変動もあり、気圧の乱高下でも変わる。結果、周囲にはサボりに見え、職場では差別と排除に直結する、と著者は言い切ります。

できる時もある。その落差が、いちばん誤解を生む。

自罰の構造も整理されています。後天的な当事者は、健常の基準を知っているから打ち明けられず、無理を重ね、症状と甘えの区別もつかなくなって、無断欠勤からの「バックレ退職」へ向かう。先天的な当事者は、楽な脳を知らないから、膨大な努力を当たり前と見なして自分を責める。重りをつけて暮らす根性キャラ、というたとえが重い。

第4章遅刻・すっぽかし・決められないの仕組み

発症前の著者は、1時間前到着を徹底していた。それが脳梗塞後、遅刻と二重予約が常態化する。冬の朝、財布を取りに戻っただけで30分経っていた、という体験から、第4章は始まります。

原因の1つめは「探せない」こと。注意障害で、物の多い視界から目当てのものを拾えない。発症8年後でも、コンビニで牛乳を探すのに5〜10分かかる。券売機、セルフ給油の画面、駅の案内板と、生活全体で探索に時間が消える。2つめは作業記憶の低下で、見た時刻や番線、電話番号がすぐ消える。手帳への転記を3回に1〜2回は誤り、気づくまで約1年半かかった。対策は、相手の前で手の甲に書いて同じ視界で写す、相手に文字で送ってもらう、など。

瑞葉さんの証言も、自分の体験で翻訳し直されます。処理速度が落ちて、会話や雑踏が速すぎ、相槌も打てない。中長期の現況把握(抱えている仕事、進み具合、所要時間)が崩れ、自己決定や納期の約束ができなくなる。著者は編集者に次回の打ち合わせ日を聞かれただけで過呼吸発作を起こした。優柔不断とは別物だ、と。最後に崩れるのは、論理的に説明する力。だから無断で消える「バックレ退職」は、できないと説明できない人の自己防衛だ、と読み直されます。

診断名が違っても、似た不自由が出る。発達障害、認知症、うつ、産後、更年期、甲状腺疾患、DVやハラスメント後の適応障害などの読者から共感が寄せられた。処理容量は脳全体の働きに依存するためではないか、という仮説は、学術的根拠ではないと断られています。

理解されない理由は、目に見えないうえに、健常者も似た「難しさ」を知っていて、延長線上だと誤解されるから。頭の中で文字列を逆から読む課題を例に、健常者の「難しい」と当事者の「不可能」の差が説明されます。

俺は、この区別がこの本でいちばん大事だと思う。難しいと不可能は、同じ線の上にない。

第5章督促状を開けない理由と「不安スイッチ」

第5章は、瑞葉さんが督促状を開けず、離職票も再発行せず失業給付を逃し、競売前の任意売却にも応じなかった理由を読み直します。支払いという課題を、日常の中で持ち続けられない。著者自身も、現金を請求書に添えて置いたまま忘れ、次の督促で何の金かも思い出せなかった。危機感という感情も続かないので、外からは楽観的に見えてしまう。

鍵になるのが「不安スイッチ」。不安に注意が固着すると、思考も読字も止まる。解決すべき課題ほど不安を生むから、目を逸らして先送りするしかない。督促状を開けないのは、目先の支払いと仕事を回すための自己防衛かもしれない。任意整理で督促が止まると相談者の頭が動き出す、という行政書士の話も同じ構図です。

依存も同じ線で読み直されます。薬物、酒、処方薬、ギャンブルは、不安から逃れるための避難。パチンコは勝ち負けに関係なく安心する、という生活保護の母親の話は、空虚な一日と向き合えない苦痛として理解し直される。

「問題から目を逸らすな」と言うのは簡単だ、と著者は書く。俺が「正解が早すぎる社会構造」で書いたのも、同じ形の話です。内面が整理される前に正解が届くと、人は理解より先に守りに入る。目を逸らすな、は正しい。でも正しさが届く順番を間違えると、人はもっと固まる。

第6章制度が使えないのは、書類を作る側の問題

第6章は、制度につながれない理由です。前著の母親たちは、ライフラインが止まっても生活保護を拒んだ。子を施設に取られる、地域に知られる、扶養照会で居場所が知られる、が理由でした。けれどほぼ全員に精神科通院歴があり、不確かな将来への不安が、優先順位の判断を奪っていたと読み直されます。

2008〜2010年、23歳で6歳の子を育てる桐原瑠衣さんの申請を支援したが、3時間の遅刻と書類なしで頓挫した。後に、渡した資料が読んでも分からなかったと告白される。記入欄を前に名前以外ほとんど書けず、欄ごとに指示してやっと進んだ。著者自身も、8冊の本を書いた後に、マイナンバーカードの申請とワクチン予約が自力でできず、家族に代行してもらっている。

問題として挙がるのは、同封物のどれから読むか分からない、案内上の名称と実物が違う、番号がない、といった点。騒がしい窓口では、自分の住所すら書けない。半分以上は作る側の問題で、本当の支援は、一緒に書類を集め、書く場所を指し示すこと。申請主義の下では、窓口で事情を問うだけで「水際作戦」として働いてしまう、とも。

脳卒中の17%が20〜64歳で発症し、7割超に後遺症が残る(2021年・厚労省)。著者は、頭とコミュニケーションで働くホワイトカラーこそ危ない、と言い、「働けない脳量産社会」を予測しています。

読めない人がいる前提で、書類は作られていない。前提を変えれば、支援の半分は設計で片づく。俺は、ここにこの本のいちばん大きな射程があると思う。

第7章診断名より工夫、そして適度な依存

第7章は、当事者と周囲への提言です。自己理解は2つ。1つめは、不自由は認知機能低下の症状で、工夫で軽減できること(定規で他の行を隠す、主語と述語を矢印で結ぶ、要約を書き込む等)。著者は脳トレより読み切ることを優先して、読む力を回復した。2つめは、不安こそが不自由を急激に悪化させる要因であること。この2つはセットです。

診断名にはこだわらない。町のクリニックでの即日診断と多剤投与で副作用に苦しむ例や、うつと誤診された人、似非医療の横行がある。足の怪我でいえば、骨折か捻挫かより、今歩きにくいと認めて杖を使うほうが先。ただし、急速に進行する病気は原因の特定が必要だ、とも断っています。似た不自由を持つ当事者の工夫を借りるほうが近道で、著者には聴覚情報処理障害(APD)の当事者の声が一番役立った。

そして「適度な依存」。人混みで情報があふれて動けなくなった著者が、妻に手を引かれると、文字が読め、考えられるようになった。不安が処理能力を占めていたためで、重いアプリを落としたPCのたとえです。10の作業のうち1を任せると、12〜15こなせる。何を誰に頼るかの見極めが生存戦略だ、と。

自立とは、人を正しく頼れることだ。2021年に俺が書いたこの考えを、この本は脳の仕組みの側から言い直している。

周囲への要望は11項目。不安をあおらない、情報処理の低下を学ぶ、窓口を負荷の少ない場にする、考えの整理を手伝う、など。根底は「不安が最大の敵」です。就労については、面接が高い壁で、続かない主因は疲れやすさ。5〜10倍疲れても対価は同じ、片足で1km歩いても1,000円、という言い方がされます。

第8章・最終章生活保護の今と、貧困の正体

第8章は、貧困の状況は悪化する一方なのに、生活保護だけは改善していると見ます。根拠は、現役利用者のYouTube発信。追い返される例は減ったと感じるが、担当の当たり外れは残る。19歳で受給した20歳のしばさんは、自殺も考えて窓口へ行き、申請書を自作したと伝えるとすんなり通った。解説動画は書籍より項目が絞られていて、混乱しやすい脳に向く。助言は、録音すること、自立を目指す意思を示すこと、「いま働けない」と伝えること。

当たり外れへの対策は、Googleの口コミや公式サイトの事前確認、担当替えの申し出、支援団体の同行。効用は心の安定で、1年目は打ち切りが怖かったが「生きたい」に変わった、という声もある。穏やかな利用者は発信しないので、悲惨な例が社会のイメージになる。制度の価値は、担当職員との穏やかな関係による不安の軽減だ、とされます。

最終章は、かつて取材した、世代間で貧困が続く少年少女の話です。救われるべき被害者なのに、処罰と差別の対象だった。家出は緊急避難で、売春は限られた選択肢の一つ。『家のない少女たち』(2008年)や『家のない少年たち』(2011年)の頃から、発達特性らしきものには気づいていた。因子は、生まれつきの特性、虐待による脳の変化、学習を奪われた・誤って学んだことの三つで、混在するので見極めが要る。

支援を拒むのは、支援が親元への送還や自由の制限を意味した、救われなかった記憶から。彼らの経済圏は、特性を否定せず、ルールが単純で、住まいや仕事まで世話してくれる。ただし弱肉強食で、そこでしか通じない社会スキルが、外へ出る妨げになる。福祉は枠にはめるのではなく、本人の来歴を尊重して合わせるものだ、と著者は言います。

結論は、貧困の正体は、避けられない状況と水面下の努力が見えずに自己責任とされる「困」であり、人権と尊厳を損なう理不尽だ、というもの。枠に人を合わせるんじゃなく、人に枠を合わせる。向きが逆なんです。

LESSONS明日から使える教訓

  1. 遅刻やミスが増えたら、叱る前に負荷を見る遅刻の増加、会議で固まる、判断の保留、ミスの急増は、叱るより先に負荷の見直しと受診の相談を考える。「昨日はできた」で判断せず、消耗の大きい仕事と軽い作業を分けて配る。できる時がある、は、いつでもできる証拠じゃない。
  2. 約束も書類も、その場で文字にする日程は口頭で済ませず、その場で書いて相手と照合する。書類は番号を大きく振り、1行に1項目、案内の名称と実物の名称をそろえる。ものづくり的にいうと、読めない人がいる前提で設計しろ、ということです。
  3. 支援は、渡すことじゃなく横に座ること困っている人には、説明書より伴走が効く。異動や上司交代のときは、配慮事項を明文化して引き継ぎ、説明は項目を絞って割り込みを避ける。俺は、これがこの本でいちばん実際的な提案だと思っています。

CONCLUSION俺の結論

結論。「だらしない」と思った瞬間に、一回だけ立ち止まれ。

明日やることは小さくていい。約束はその場で文字にして相手と照合する。書類を渡すときは、番号を振って、どこに何を書くかを横で指し示す。部下の遅れには、問い詰める前に「何ができないか」を書いて伝えられる経路をつくる。

自分が崩れかけているなら、努力不足と機能不足を分ける。督促を止める、代理人に頼む。不安を減らす手を先に打って、人を頼る。頼ることは負けじゃない。自立の一部です。

NEWS関連ニュース

この本のテーマについて、最近話題になったニュースです。

薬事日報 ・

【高次脳機能障害者支援法公布】令和8年4月1日施行

高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)が2025年12月24日に公布され、2026年4月1日に施行されるという報道です。記事には、高次脳機能障害者支援センターの指定と業務などが規定されていると書かれています。

この本とのつながり:本書が訴える、見えにくい脳の不自由が支援につながりにくい問題と重なる動き。当事者の困りごとを、制度の側が受け止める入口として注目されます。

FOR YOUこんな人におすすめ

合わないかもしれない人:診断や治療の方法を知りたい人。これは当事者の語りと考え方の本で、医学書ではありません。

FAQよくある質問

『貧困と脳』は何が書いてある本ですか?

ルポライターの鈴木大介さんが、脳梗塞後の高次脳機能障害の経験をもとに、貧困の現場で見た行動の「なぜ」を脳の不自由から読み直す本です。幻冬舎新書から出ています。

「脳性疲労」とは何ですか?

頭が白くなる、霧がかかるような疲れのことです。疲れの量ではなく質の問題で、作業の種類や日によって大きく変わるため、周囲にはサボりに見えやすいとされています。

貧困は、なぜ脳の問題と結びつくのですか?

著者は、貧困の最大の要因は働けなくなり戻れないことで、その原因は見えにくい脳の不自由だと考えています。診断名は問わず、貧困はその二次症状だという立場です。

遅刻やすっぽかしは、どう説明されますか?

物の多い視界から目当てのものを探せない注意障害、見た時刻や電話番号がすぐ消える作業記憶の低下、処理速度の低下で説明されます。意欲の問題とは見ていません。

督促状を開けないのはなぜですか?

支払いという課題を日常の中で持ち続けられず、不安が思考を止める「不安スイッチ」が入るためです。課題が重いほど不安が増し、目を逸らすしかなくなると説明されています。

制度につながれないのはなぜですか?

書類が読めない、どれから読むか分からない、記入欄で固まる、といった困難があるためです。著者は半分以上は書類を作る側の問題だとし、隣で一緒に書く支援が必要だと述べています。

当事者本人は、何をすればいいのですか?

診断名より、不自由への対策を知ることが先だとされます。環境を整えて「まだできること」を試し、不安を減らし、適度に人に頼ることが勧められています。

職場では、どう対応すればいいですか?

遅刻やミスが増えたら、叱る前に負荷の見直しと受診の相談を考えます。約束はその場で文字にして照合し、異動や上司交代のときは配慮事項を明文化して引き継ぎます。

「適度な依存」とは何ですか?

不安が処理能力を占めるため、人の手を借りると、かえって自分でできる量が増えるという考え方です。妻に手を引かれると文字が読めた著者の例が挙がっています。

この本は誰に向いていますか?

部下や同僚の不調に戸惑っている人、福祉や制度設計に関わる人、自分を責めがちな人に向いています。診断や治療の方法を知りたい人には向きません。

MONOGENIC伊丹谷のブログから

ご注意:著者の体験と見解にもとづく本で、個人差があります。症状が気になる場合や、遅刻・ミスの急増が続く場合は、医療機関など専門家に相談してください。登場人物は第八章以外すべて仮名です。

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